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No.194 2006年MVP
f0136083_22541572.jpg 当コラムが選定する2006年シーズンMVPは、GK原裕晃(はら・ひろあき)! リーグ戦34試合のうち33試合、天皇杯3試合にフル出場し、栃木のゴールマウスを守った。失点は35。これはDFとの連係も加味して評価しなければならない。数字に表れないファインセーブ、スーパーセーブはもっと加味されなければならない。その部分で、原は「守護神」の名にふさわしい活躍をシーズン通して見せた。PKを3本止めた。警告はたったの1回。
  今季を振り返った感想を聞くと「そうですねえ、取りこぼしが多かったですよね」とチームのことを言う。原にとってはいつも自分のことは二の次で、常にチームという枠組みを据えて物事を考えている。「そういう中でも、防がなければならない失点はありました」と記憶の糸をたぐり寄せようとして「ただ、失点シーンってあまり覚えていないんですよね」。フィールドプレーヤーたちは事細かにワンシーンを説明したりするが、原の場合は「一瞬一瞬の出来事だから。攻めてくる相手と、対抗するこちらの守備陣との位置関係とか、刻一刻と場面が変わってるわけです。瞬間瞬間にいろんなことを考えているので、よく覚えていないことが多いです」。
  それでも今年は、忘れられない思い出ができた。「天皇杯の東京ヴェルディ戦。味の素スタジアムの大きな屋根に栃木のサポーターたちの応援が反響して、ものすごかった。今年一番感動しました」「最もこわかったのは平本。交代投入で入ってきて、友だちの山崎に“本気で行くよ”と言ったそうです。ホント、恐怖を感じたなぁ」。勝利した感激の輪の中に、実は原の姿はない。前半シウバに蹴られた脚が腫れていて、ロッカールームのドクターの元に一目散だったから。次の清水エスパルス戦。味方の4ゴールには「鳥肌が立ったですよ。時間を知らなかったから(時計は原の背後にあった)追いつけると本気で思ってました」。結果は6失点。「レベルの差はあったけど、自分も力を出し切れなかった」と、帰りの新幹線の中で、平静を装いながらもむなしさを感じていた。
  いいことがあっても悪いことがあっても動じない。スーパーセーブの試合後、記者団に囲まれても「GKが目立ってはいけないんです」と、記事ネタになるようなせりふは吐かない。常に冷静。来年はいよいよJ2昇格を目指すシーズン。「トレーニング環境のことは理由にしたくない。どこまでハングリーになれるかだと思んです」と決意をみなぎらせ「相手に1本のシュートも打たせない試合が理想。それは僕だけではできないこと。DFラインやボランチと力を合わせてやっていきます」と持論を語った。さらに「相手がどこでも一試合一試合、自分の持っている力を全部出し切る。この気持ちはいつも変わりません」ときっぱり。「実はですね、闘志や感情をむき出しにしたいタイプなんです。でも昨シーズンのことがあるんで抑えているんです」。5試合出場停止は、今となってはいい薬だった。
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by tsc2007 | 2006-12-20 22:54
No.193 新人賞は久保田
f0136083_22554251.jpg 当コラムが選定する2006年シーズンの新人賞は、MF久保田勲!
  5月に追加登録され、5月21日のホームのソニー仙台戦で先発初出場。その後の23試合のうち18試合でスタメンに名を連ね、13試合でフル出場した。当初はボランチで起用され、チームが4バックを敷いてからの終盤戦は右サイドハーフ。公式記録上23本のシュートを放ち、3ゴールを決めた。そのいずれもが決勝ゴールだった。
  埼玉県川口市出身。国士舘大卒。初出場の日はまだ22歳だった。ボランチの種倉、菊地がケガし代役の形ながら「この日の大きな収穫」(第133回コラム)だった。23歳になったばかりの佐川急便東京戦で強烈なミドルシュートを決めてヒーローになった。佐川急便東京がシーズン2位だったことを考えると、貴重な勝利だった。次のホンダ戦でも、自身のシュートがバーにはね返り、高秀の決勝ゴールにつながった。後期の鳥取戦では後半ロスタイムに約30メートルの決勝ミドルをたたき込んでホームのファンを沸かせた。アウェーのロッソ熊本戦、西川のシュートのこぼれ球に反応して押し込んだ決勝ゴールは、形は泥臭かったが、私は栃木SCの今季ベストゴールだと思っている。その試合まで4試合出場がなく、へこみそうになっていたから、久保田自身にとっても起死回生の仕事になったし、来季はJ2昇格争いの一騎打ちとなりそうなロッソに勝ったという意味でも貴重なゴールだった。
  栃木SCでのシーズンを久保田は「勉強させてもらいました」と振り返った。「試合に使ってもらって、サッカーの見方が変わりました。大学のころは、うまいことが一番だと思っていましたが、栃木SCでプレーして、強いとか速いとか、試合に勝つための手段が大切なのだと分かりました。例えば前期のホンダ戦。ホンダの方がうまかったと思うけど、速さや勝負どころでの集中でウチが勝った。これが勝負なんだと思いました」。
  春、大学を出たが行くところがなかった。不安だった。一人、黙々とトレーニングを続けていた。だから、栃木SCへの入団が決まった時の喜びを忘れない。一つひとつのプレーに気持ちがこもっていたのは、短い期間ながらも挫折感を味わったことが背景にある。ボランチの大先輩、堀田は「頭が良く、受け入れる能力もある。栃木の軸になる選手」と高く評価する。私は、足利でのロッソ戦で打開策の乏しい中、左の深い位置から、右の高い位置にいた只木にぴたりとつなげたサイドチェンジのロングパスを鮮明に思い出す。この一本で、並の選手ではないことを感じた。今後が楽しみだ。宇都宮で中学教師をしながらの一人暮らしだから、食事と睡眠の体調管理も大切になる。
  本田と菊地も新人賞候補だった。センスもハートもいいものを持っている。
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by tsc2007 | 2006-12-14 22:55
No.192 何事も前向きに
f0136083_22583326.jpg 栃木SCは12月9日、栃木県グリーンスタジアムで、全国高校サッカー選手権に県代表として出場する真岡高校と練習試合をした。元栃木SC主将の真岡高・菊地隆之監督が、初戦の相手の滋賀県・野洲高(昨年優勝)を仮想したトレーニングマッチを高橋監督に申し入れて設定された。後半、真岡高に先制されたが直後に速攻から金子が取り返し、終了間際に再び金子が貫禄のシュートを決めて2-1で勝った。「真岡高はいい守備をしていた。4・7・8番のラインは強烈だ。インターハイ3位は本物。期待できるんじゃないか」(高橋監督)。栃木は、リーグ戦終盤に出番がなかった石川や中川が元気にプレーした。
  これで今シーズンのピッチ上での活動はすべて終了し、約1か月のオフに入った。クラブがJリーグ準加盟を目指す中、スタッフも選手も、これまでとは違った心境でのオフになるだろう。こういう時の基本は「何事も前向きに考える」ということだ。只木のように「栃木をJ2に上げて引退」と明確な信念を持つ選手もいるが、多くは不安を持っているだろう。選手たちにはチャレンジすることを期待する。サッカーをやっていて、Jリーグに手が届くところまで来て、いざ勝負という時に背を向けてしまうのはもったいない。葛藤や確執を伴って来季戦力構想は近く固まると思うが、期待を持って見守りたい。
クラブも、資金や人材の不足を嘆くことなく、J2昇格という揺るぎない座標軸を据えて上昇カーブを描いてもらいたい。栃木SCそのものの命運がかかる来シーズンであると共に、私たち栃木県民が今後、大人も子供も夢を持って人生を生きられるかどうかが決まるかもしれない、高揚感に包まれた一年になるといいと思う。もちろん、来シーズンがダメでも次がある。熱く、しぶとく、前向きに行きたい。どこかのチームを誘致するのでも、企業PRチームでもない、正真正銘・生粋の地元チームなのだ。JFL参戦も栃木県スポーツ界にとってビッグなことだったし、7年間戦い続けたことはさらに尊い。このことに、私たちはもっと自信と誇りを持つべきだ。次は、幸せを感じられるふるさと栃木にするために「クラブの奮闘と県民の後押し」という連係プレーが実現することを祈りたい。
  練習試合を見届けて、私自身も栃木SC取材はオフになった。その夜、東京の日本武道館でエリック・クラプトンのコンサートを聴いた。週末はほとんど一年間、サッカー漬けだったので、忘れていた何かを思い出したような、清新な気持ちになった。その歌とギターに心を揺さぶられながら、「生きていればいいこともあるんだよなぁ」と、こみ上げるものを抑えられなかった。
  さて次回は、お待たせ「栃木SCふぁん! 2006年新人賞」の発表!
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by tsc2007 | 2006-12-12 22:58
No.191 2006年回顧
f0136083_2303450.jpg 栃木SCの2006年JFLリーグ戦は、天気に例えれば「晴れ一時長雨」だった。開幕から13試合で佐川急便大阪に1敗しただけ。ホンダに勝って2位に浮上したまでは順風満帆だった。続くロッソ熊本とアローズ北陸に連敗してから後期第15節まで、18試合も連勝がなかった。これが長雨だ。その影響は、畑の野菜のように顕著で、最終盤6試合を4勝2分けで有終を飾ったものの、首位ホンダに勝ち点差23もつけられて7位に終わった。アローズと佐川急便大阪に2敗したこと、高崎と佐川印刷に敗れ、刈谷、ホンダロック、ジェフ・クラブと引き分けて逃した勝ち点がもったいなかった。皮算用すると、2位か3位になれるはずだった。長雨の原因をしっかりと分析してもらいたい。
  最終戦後の記者会見で、高橋監督は「今シーズンは、しっかりした守備からアグレッシブな攻撃という、今までになかったバリエーション(4バック)ができたことは進歩だった」と就任4季目を振り返った。「昼働き、夜に暗いクレー(土)のグラウンドで練習するという環境の中、選手たちはわがままも言わず、ひたむきに頑張り、よく戦ってくれた」と目をうるませながら選手をねぎらった後、闘将の顔に戻って「勝たなければならない試合がたくさんあった。いいゲームをやりながらも点が取れなかった。しっかり点を取って勝ち切れば、Jの夢が夢ではなくなる。足りなかったのは得点力」と課題を挙げた。会見後、観客にあいさつした高橋監督は「来季はさらに進化してJを目指したい」と力強くマイクを通して語った。
  主将1年目を終えたDF横山は「ターニングポイントになったのは前期のロッソ戦とジェフ・クラブ戦。特にジェフ戦のあの1失点(後半ロスタイムに失点し引き分けに)がものすごい心残り。ダメージも大きかった。あれ以降、中だるみのようになってしまった」と反省。ただ、後期にロッソを破った試合は「前期のくやしさをぶつけ、自分でもいいサッカーができて、意地を見せられた」と立ち直りのきっかけと位置付け「来シーズンは全試合が負けられないという、いい緊張感を持って臨みたい」と表情を引き締めた。
  私は栃木SCがJFLに参戦してからの7年間、ずっとこのチームを取材してきたが、ホームもアウェーも全試合を取材したのは今シーズンが初めてだった。今までで最も多い34試合。そのどれもが私にとっても貴重な90分間だった。単なる「Jへの道」ではなく、ふるさと栃木県に夢が訪れる予感を意識しながらの一年だった。私が選ぶベストマッチは、後期のロッソ戦(熊本県八代市)、YKK AP戦(富山県魚津市)、三菱水島戦(栃木県グリーンスタジアム)。J2とJ1に真剣勝負を挑んだという価値を重んじれば、天皇杯のヴェルディ戦とエスパルス戦。いずれも4バックに移行してからの試合だ。
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by tsc2007 | 2006-12-07 23:00
No.190 最終戦も永井!
f0136083_2314891.jpg 鮮やかな決勝ゴールだった。86分、左サイドをドリブルで上がった茅島がファーサイドに入れたクロスボールに、走り込んだ永井が頭で合わせた。今季最終戦の三菱水島戦。ホームの栃木県グリーンスタジアムで、声援を送り続け、あるいは固唾を飲んで栃木SCを見守った3200人以上の地元ファンを彼らは裏切らなかった。後半投入の茅島と永井で結果を出したことも成果だったが、高橋監督がこの4年間でたどり着きつつあった理想のサイド攻撃が結実した瞬間でもあった。だから、一段価値の高い勝利だったのだ。
  栃木は、横山と照井のストッパーに右・遠藤、左・高野のサイドバックを張らせた4バック。ボランチは堀田と種倉。中盤サイドは右に久保田、左に只木、トップ下に西川、1トップが吉田賢太郎の4・5・1。西川は活発に前に挑むので2トップと見てもよかった。三菱は16位ながら能力の高い選手をそろえ、右の菅、左の川口の仕掛けと前線の松岡、高松に渡辺が絡んだ攻撃は危険で、ホームの栃木はなかなかペースを握れなかった。こういう時は失点を食らわないことが第一。栃木は天皇杯を経て備わった守備意識の高さが随所に見られた。そのひとつは9分、左サイドで高野がオーバーラップした裏のスペースを突かれたシーン。菅のドリブル突進を高野が必死に追い種倉がカバーし、2人でボールを奪い返した。ここでクロスを許さないことが大事だ。栃木の集中した守備に三菱の攻撃も30分ごろ息切れした。
  0-0で迎えた後半、栃木は久保田のシュートがゴールポストを直撃。これが両軍の攻撃意欲に火をつけた。58分、59分と三菱が右クロスから決定的チャンスを作った。60分、西川に代わり左サイドに入った永井が、3分後にはアグレッシブドリブルから切れ込んでシュート。ピッチが俄然、永井サイドで沸騰し始めた。69分、久保田に代え茅島を左サイドに投入し、永井が右サイドに回った。攻撃陣形は整った。73分には茅島のクロスボールから永井がシュートするシーンがあり、期待感が高まった。そして86分、高野から好パスを受けた茅島が右を見ながら侵入。三菱DF陣は佐野や只木を見なければならず、茅島をフリーにした。美しい放物線のクロスボールが茅島の左足から繰り出された。
  ヘディングしたボールがゴールネットに吸い込まれるのを確かめてから、永井は右人差し指を突き上げながらサポーターの前に走った。一度大きくジャンプしガッツポーズした永井を茅島や只木や堀田、高野、横山、みんなが抱きしめ、歓喜の輪になった。「ウチには茅島、永井の切り札がいる。後半勝負に出て、結果的にその二人が点を取った」(高橋監督)。ハラハラさせながらも、残りわずかのところでの決勝ゴールにより1-0の勝利。一番いい形で最終戦の幕は閉じられた。
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by tsc2007 | 2006-12-06 23:01
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