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No.224 柱谷幸一・新監督が就任
f0136083_18405226.jpg  柱谷幸一さんのことをここで詳しく述べる必要はあるまい。Jリーグでは浦和と柏でプレーした元日本代表FW。J2山形と京都で監督を務め、京都をJ1昇格に導いた。私は柱谷さんがいた浦和の試合を取材したことがあり、そのアグレッシブな動きを記憶している。6月19日の高橋監督辞任直後に新監督として名前が挙がってびっくりしたが、6月24日の就任発表記者会見でご本人を前にして「よくぞ栃木に来てくれたなぁ」と感激。「状況は厳しく、決して簡単な仕事ではないが、シーズンが終わった段階で4位以内・J2昇格できるように頑張りたい」と語るのを聞いて、栃木SC変革の予感を持った。
  「Jクラブで指揮を執りたい気持ちがあったので、栃木からオファーをもらった時には正直悩みました」と隠さずに打ち明け、「フロントのJに入りたい、力を貸してという言葉に胸を打たれた」と、JFLながら開幕戦1万2000人以上、常時3000人近い観客が集まる栃木の魅力をイタリア語のプロビンチャ(地方、田舎)という言葉を使って表現。「少し田舎だけどサッカーを楽しめる環境が栃木にはある。ぜひその仕事をやっていきたいというのが(監督を引き受けた)大きな理由でした」と言った。
  栃木SCに関しては「チーム戦術は悪くないと思ったが、一対一の場面で勝てていないし、走れていない。フィジカル的なベースになるところが劣っている」との印象だ。「プロとアマが混在しているのをもう少し整理していかないといけない。できるだけ昼間のトレーニングを多くして、まずはコンディションを上げていくことが必要。今の栃木より、どこもいい環境とモチベーションでトレーニングしており、これが差になっている。午後1時キックオフで、夜の練習をしているのは、どう考えてもおかしいですよ」と、まず練習環境を改善していく意向だ。昼の練習で人数がそろわない点は、ユースチームや地元高校生と一緒にやることを提案。「夜の選手(アマ)も、いい選手には力になってもらう」ともつけ加えた。
  柱谷さんは自身の3つの理念「結果を出す」「内容にこだわる」「フェアプレー」も披露した。「この3つを同時に達成できて、初めてサポーターや地元の人に愛されるチームになる」というのが信条だという。後期の戦いでこれを栃木が実践したら、奇跡のような出来事になりそうだ。前期を7位と低迷し、残り17ゲームで4位以内を目指す厳しいリーグ戦。「大事なのは目の前の試合、目の前のトレーニングを100%でやっていくこと。4位以内というよりも、毎日毎日100%、その積み重ねなんです」と強調した。
  そして、「サポーターがたくさんいることが一番大きな力になります。つらくて苦しい時期を一緒に乗り越えて行きましょう。今、支えてくれる人が本当のサポーターだと思っているので、一緒に4位以内を目指して頑張りましょう」と、サポーターや地元ファンへのメッセージで会見を締めくくった。6月26日の昼の練習から現場を仕切り、夜の練習も昼に劣らぬ内容で指導し、選手を見極めて、初采配となる7月1日の沖縄でのFC琉球戦に臨む。
監督が代わるとサッカーが変わる。選手起用や戦い方など、古くからの栃木SCファンにも、チーム史上初のプロフェッショナルS級・柱谷新監督がもたらす変化を見るのが楽しみの一つとなるだろう。
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by tsc2007 | 2007-06-26 18:38
No.223 ロスタイム執念の同点ゴール
f0136083_19374460.jpg  もう前期終了だ。5月連休のころから胃が痛くなるような試合が続いていたので、あっという間の前期17試合だった。16節終了後に高橋監督が辞任し、この佐川印刷戦は浅野ヘッドコーチが監督代行を務めた。4・4・2の2トップは上野と山下。浅野ヘッドは「サイド攻撃を徹底していこう」と、右・久保田と左・石川の両サイドハーフにも高い位置取りを指示していた。ポゼッションは佐川の方が上だったが、栃木は出足よくボールを奪ってチャンスを狙った。18分、左CKがこぼれたところを谷池がゴール前に放り込んだ。上野が正面フリーでいた。ヘッドで合わせて先制。J1広島から移籍後3試合目で初ゴールだ。小林や堀田に抱きつかれた上野が笑顔を爆発させる。「前節にグリーンスタジアムでできて落ち着きましたね。3試合目でJFLがだいぶ分かってきたし、フィットしていける感じ」と感触良好だ。
  ところが佐川の中盤、特に濱岡と大槻の小柄な二人が危険だった。浅野ヘッドは「ゾーンでブロックをつくり、出てきたところを抑える考え」だった。マンツーマンの必要はないが、彼らの自由をもう少し邪魔する工夫はほしかった。その濱岡のキラーパスから失点した。30分、栃木はボールがあった右寄りにかたよってしまった。その真ん中あたりから濱岡が右前方へスルーパス。オーバーラップの右サイドバック村尾にぴったり合い、完全にフリーで流し込まれてしまった。このあたりのピッチ内の状態を上野は「勝ちに見放されているからか、プレッシャーで体が動かなくなってしまった」と見ていた。確かに佐川の躍動感についていくのが精一杯だった。
  その流れが後半に入っても続き、ほとんど可能性が感じられないピッチとなってしまった。56分、右サイドから崩されてクロスボールから失点。ここで間髪を入れずに浅野ヘッドが手を打った。57分、山下を引っ込めて横山聡を入れたのだ。山下の途中交代は初めて。「優作のポストプレーと高さによるセカンドボールを相手の背後で取りに行く作戦」だった。さらに69分、吉田賢太郎と高秀を入れて3・6・1にした。勝てていない時に採用するプラン。ロスタイムにその結果が出た。ロングパスを受けた右サイドの高秀が中央の横山聡にクサビを入れ、上野が粘って走りこんだ賢太郎につなぎ、賢太郎は「どんな形か覚えていないが押し込むだけだった」と、執念を体で表現した同点ゴール!
  スタッフも選手も「高橋監督の集大成」と臨んだ一戦。何としても白星で終わりたかった。「高(たかし)ありがとう」とアンダーシャツにマジックで書いていた選手もいた。在籍が長かったりアマチュア登録の選手たちは目を真っ赤に泣き腫らしていた。高橋前監督と二人三脚だった浅野ヘッドは、とりわけ悔しかったろう。「いろんな思いがあったので、この一戦は絶対に勝ちたかった。高橋監督が掲げてきたスピーディーでアグレッシブなサッカーで、引き分けにはできましたけど…。重かった試合で、余計に空回りしてしまった。選手たちが今日学んだことを次に生かしてくれればと思います」。成績低迷と監督交代で揺れる中、この一試合にかけた浅野ヘッドは敗軍の将のように力なく語った。
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by tsc2007 | 2007-06-25 19:37
No.222 流通経済大戦1-1
f0136083_11505982.jpg  前期第16節の流通経済大戦は、序盤から横山聡や小林、西川がシュートを狙い、栃木ペースで進んだ。20分、右CKを茅島が低くて速いボールでファーの上野に合わせ、上野が頭で落としたところを小林が右足で詰めて先制した。上野の高さを生かした狙い通りのゴール。茅島のキックの精度が効いた。CKからの得点はジェフリザーブズ戦で照井が決めたヘディングシュート以来、実に13試合ぶり。セットプレーからの得点が少ないことも低迷の一因だ。
プラン通りの先制点だったが、その後、ゲームは一進一退となり、後半に入って徐々に流経大の動きが目立ってきた。特に右サイドの西のスピードが際立った。56分、相手右寄りのFKの場面で、栃木に一瞬のエアポケットが生じた。宮崎がクイックで三門に回したボールは、縦に走りこんだ西への鋭いスルーパスとなってつながった。西はマークを外回りにかわして栃木陣内を切り裂き、ニアからネットに突き刺した。栃木はFC岐阜戦の同じ付近からの失点シーンを思い出してしまったのだろうか、グラウンダーの仕掛けに戸惑ったように見えた。
試合後の記者会見で流経大の中野総監督が「(栃木が)調子がいい時なら1-0で逃げ切ったのでしょうけど…」と言ったのは、さすがに洞察のあるサッカー人の言葉だった。まさに、こんな形で失点するはずがないし、もし同点にされても、調子がいい時なら、その後に見せた相手ゴール前での波状攻撃で1点くらいは取っていたはずだ。気温31度超は、昼の練習を開始して1週間たらずの栃木の選手にとっては過酷だったようで、勝ち越し点を狙う必死のシュートでも、明らかに体力的な問題でまともに蹴れないシーンを何度も見ることになった。
1-1でタイムアップ。7戦勝ちなし、ホーム6戦勝ちなし。こんな事態に陥るとは誰が予想しただろう。ホーム初登場のFW上野優作は前線で存在感を見せたし、横山聡と右・西川、左・茅島のからみもあったし、ボランチも小林が前寄りを意識し堀田がバランスを取るなど、チーム全体では悪くはなかった。高橋監督も「選手は前向きに戦ってくれた」と内容には一定の評価を持った。しかし、Jを目指すリーグ戦は、内容よりも結果が重視される。この日、サポーター集団は初めて応援をボイコットした。栃木SCを誰よりも愛している彼らにとっては苦汁の行動だったろう。
流経大戦3日後の火曜日は仕事が休みで、のん気に那須の山を歩いていた。だからこの日、高橋監督が辞表を出し、受理されたことなど、つゆとも知らなかった。高橋監督が夜の雀宮中グラウンドで選手たちと涙の握手を交わしたことも、翌日に本人との電話で知った。次節の佐川印刷戦は浅野ヘッドコーチが監督代行で指揮を執るという。水曜昼の練習後、浅野ヘッドと話した。「高橋監督が今までやってきたことを確認し、ゲームをイメージしてトレーニングするだけ。勝つためにしっかり準備しようと…」。高橋監督と二人三脚で現場を支えてきた浅野ヘッドは、たぶん一試合限りとなる監督代行の佐川印刷戦を自分たちの集大成と位置づけて、この90分間にサッカー人生をかけて臨むに違いない。
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by tsc2007 | 2007-06-22 11:51
No.221 吉見は夢をくれた
f0136083_1140524.jpg  MF吉見康之(26)が現役を引退した。昼の練習が始まった6月12日に言葉を交わした時にはまだヤル気だったが、その1週間前に「左ひざをねんざ」していて、14日に「前十字じん帯断裂」の検査結果を聞き、決意したようだ。吉見といえば、2005年前期第10節・ホンダ戦での「ロスタイムの歓喜」を覚えているファンは多いだろう。首位ホンダに2点リードを追いつかれたのはロスタイムに入ってから。高橋監督は「引き分けでも次につながる」と思っていたが、残り10分で投入された吉見がタイムアップ寸前、日大の先輩・種倉からのパスを受けて左サイドを突進し、左足で強烈なミドルシュートを決めた。ホンダ戦10試合目にして歴史的な初勝利。これで上位に4連勝し、破竹の9連勝・前期首位・天皇杯JFLシードという快挙につながった。この機運から、J昇格の話が現実味を帯びてきたのだった。
  この年はまだ、今のように取材メディアは多くなかった。夏の中断期間の練習試合はなおさらで、9月11日の県総合運動公園サッカー場には私一人しかいなかった。埼玉SCとのトレーニングマッチの最中、吉見が転倒。茂木トレーナーからバツのサインが出た。その瞬間の衝撃を今も忘れない。ホンダ戦の劇的ゴールや、その2戦後の三菱水島戦決勝ゴールを見て、吉見は栃木のヒーローになり得る選手だと確信を持っていたからだ。「右ひざ前十字じん帯断裂」というサッカー選手にとって一番やっかいな故障。人気が出た矢先の大ケガ。さぞかし落胆しているだろうと、水戸の入院先を見舞った時の吉見は、予想に反して快活で、こちらが力をもらったくらいだ。このことは当コラムにも書いたが、彼の前向きな姿勢を目の当たりにして、何ていい若者がいるんだろうと思った。そして「栃木SCというチームをもっと見つめていたい」と思ったものだ。ケガが縁で吉見の側面を知り得たが、選手一人一人にも私の知らない人生がある。だから、せめて彼らのプレーだけはしっかりと見つめ、伝えなければならないと強く感じさせられたのだった。
  夜の練習場の外周を黙々と走るリハビリ中の吉見の姿は、私が学校の先生だったら教科書に取り入れたいくらいの光景だった。回復したのも束の間、再び同じところを負傷。そして今回、追い討ちをかける事態となった。致命傷だった。吉見は「これまでも日々悔いなくやってきたので、悔いなく引退を決心できました」とすがすがしく言った。今後はフロント入りして広報を担当するという。浦和東高でも注目され、日大を出て栃木SCに入団し4シーズン。短いサッカー人生の中で、ジャストミートのJリーグ級弾丸シュートを身につけて、一瞬だったけど眩しく輝いた星だった。高橋監督は、流通経済大戦後の会見で吉見引退についてコメントを求められ、「スピードとパンチ力がある切り札だった。人間的にも素晴らしく、今後もチームのために必ず活躍してもらえると思う」と語った。JFL通算24試合4ゴール。今季第3節、栃木県グリーンスタジアムでのジェフリザーブズ戦の61分に交代投入された。あのホンダ戦と同じホームのピッチを走った30分間が、私たち栃木のサッカーファンに夢をくれた男の最後のユニホーム姿だった。
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by tsc2007 | 2007-06-19 11:41
No.220 Better late than never
f0136083_15334839.jpg  三菱水島に敗れ、6勝5分け4敗で7位後退となった栃木SC。どう考えても、危機的状態極まれり…だが、にわか豪雨が一転して笠岡に広がった青空を見上げ、なぜか分からないが「もう大丈夫だ」と思った。ヤケクソになったのでも、達観したわけでもない。J1から移籍した上野優作の栃木SCデビュー戦。出場停止の北出と小林の代わりに「右サイドバック遠藤、ボランチ山田のベテランで後ろを安定させて、前の上野と山下に大車輪で働いてもらおうぜ」というのが私のつたない発想だったが、高橋監督は「経験と実績がある」センターバック専門の横山寛真と「モビリティーがある」ルーキーの深澤を共に今季初起用した。勝利という結果には結びつかなかったが、この発想は悪くないと思った。試合後の二選手の話…。
横山は試合前夜、笠岡の宿舎で高橋監督からスタメンを伝えられた。「今季初めてだから緊張するかと思ったけど平常心で入れました。信頼しているんだゾ、とホテルで監督に言われた言葉を忘れずにプレーしました。サイドバックなので守備から入って、前の選手との連係を確認して攻撃参加することを考えながら」。30分には久保田を追い越して深い位置からクロスボールを供給した。右ひざのケガもすっかり良くなって体調万全。「けっこう攻撃が好き」と、久々の公式戦ピッチの感触を確かめた前主将は「みなさんが思っているほどチームの雰囲気は悪いわけではないですよ。優勝をあきらめるなんて、一回も思ったことないし。みんな、しっかり前を向いて、トレーニングをやって試合に臨んでいます。見捨てないで応援してください!」。在籍7年目のベテランの顔に、リーグ戦へのさらなる決意がみなぎっていた。
深澤は、プロ契約の新加入選手の陰に隠れた感じだったが、ボランチで試されており、ついに公式戦デビューを果たした。「前に積極的にからむことと、運動量で勝負」と臨み、「ボールが前の上野さんや山下さんに入った時に、うまくサポートできなかったり、ボールを奪う回数も少なかった」と反省の弁ばかりだったが、53分間のプレー時間の中で、何度も前線にボールを運んだり、中盤でのポゼッション意識を発揮した。「試合に出るために努力してきました。悪いムードを変えるために入ったのに、この結果は悔しい。ボールを運ぶのか、ボールを入れてリズムを取るのか、はっきりプレー出来なかった。自分なりの課題が見つかったと思います」。新人の必死さが良く表れた初戦だった。ボールを持った時の前に向かう勢いはピカ一。開幕戦で注目された高安と共に、もっと見たいルーキーだ。
6月12日から昼間のトレーニングがスタートした。鹿沼市の人工芝と県総合の芝生で、プロ契約選手と都合がついたアマ選手が参加。木曜夜はグリーンスタジアムで練習できるようになった。仕事で参加できない選手との練習機会の差が新たな課題となるが、「芝で練習」という最低限の環境改善に一歩近付いた。シーズン前にクリアしておくべきことだったが、「Better late than never(遅くても、何もやらないよりはまし)」ということわざの通り、これからも改善を進めてほしい。理想は「グリーンスタジアムで昼間に練習」。これが現実になれば、選手たちは真の力を発揮できる。
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by tsc2007 | 2007-06-18 15:38
No.219 風が吹いていただけ
f0136083_2275583.jpg  岡山県は、降水量1ミリ未満の日が日本一多いので「晴れの国」と言われているそうだ。前期第15節の三菱水島戦があった6月10日の天気予報は「曇りのち晴れ」だったので油断していたら、キックオフ直後に豪雨になった。雨だけならいい。強い風が三菱の側から吹いた。瀬戸内海からの風だという。まったく、この風のために、39分の三菱の右CKはファーポストに当たってゴールインしてしまった。後半には青空になって風も弱まった。過去4戦全勝の相手に0-1の敗戦。風が吹いていただけなのに、現実は厳しい。
  栃木はJ1広島から6月1日付で完全移籍した上野優作が、山下との2トップで先発した。小林と北出が出場停止で、新人の深澤がボランチとして初出場し、北出の位置には横山寛真が今季初登場。両サイドは左・石川、右・久保田。大降りの雨の中、上野や山下を前線のターゲットにしてゴールに迫ったが、先制機を逃し続けた。相手守備陣が栃木2トップを意識してゴール前を固める中、久保田がミドルレンジから積極的にシュートを放って、三菱のラインに揺さぶりをかけた。山下や石川にもチャンスがあったが、オフサイドや相手クリアで決められなかった。後半は右に永井、左に茅島を投入。高野を下げて吉田賢太郎をトップ下に入れ、4・4・2から3・5・2にして前がかりになったが無得点に終わった。ロスタイムの吉田のボレーシュートが惜しかった。
  前半は主に上野と山下をつかったセンター攻撃、後半はサイド攻撃を仕掛けたが、三菱の守備網は堅かった。三菱のセンターバック・萩生田は昨季まで栃木に在籍した選手。定位置をつかんだハードマーカーが高橋監督にキツい恩返しをした。さらに「サイドのオーバーラップを警戒されて、タテを切られていた。ウチのストロングポイントが機能しなかった」(高橋監督)。セカンドボールへの一歩の遅さ、数的優位で挑めないプレス、パス精度の低さなど、古くて新しい課題が目立った試合ではあったが、上野が入ったことでチーム全体に求心力を及ぼす核ができたような印象を受けた。これは、不振にあえぐ今の栃木SCにとっては意味があることだ。みんなが上野を見ることで、何かが変わるかもしれない。試合後に上野は、得点が生まれなかったことよりも、「チームとしてやろうとしていること」に重きを置いて語った。「できた部分とできなかった部分があった」「つながった部分もあるし、そうでないところもあった」と微妙な言い回しながら、「何もできなかった」とは言わなかった。Jのステージで11年間も実績を積んだ上野の目に、栃木の可能性が見え隠れしたのだと思う。
  1位・佐川急便、2位・FC岐阜が敗れた今節、勝ち点3を取れなかったのは痛い。ジェフリザーブズにも抜かれて7位転落。でも「なべ底状態」は、この試合が最後となるだろう。笠岡での試合は、これまでの流れの分岐点になる予感があった。キッカーの川口はいい選手には違いないが、栃木サイドとしては、ちょっと風にあおられてしまっただけだと考えたい。次の流通経済大戦は上野がホーム初登場する。ここからだ。JR宇都宮線だって上野が出発点ではないか。栃木は必ず優勝レースに復帰すると信じて、応援を続けよう。
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by tsc2007 | 2007-06-11 22:08
No.218 3人優位さえも逃した
f0136083_10563696.jpg  TDK戦を引き分けた夜、古くからのサポーターと電話で3時間も話した。JFLに昇格しリトバルスキー率いる横浜FC(現J1)とも対戦した2000年の「本当に負け続けたね」「よく最下位にならなかったよね」という話から始まって、Jリーグ準加盟の現チームに話題は移り、「今はうまい選手が多いけど、サッカーがおとなし過ぎるよ」「あのころはヘタな選手ばかりだったけど、前へ前へという姿勢が伝わってきたよね」といったことを延々と語り合った。
  「まだ60%ぐらいの出来」(小松監督)という新加入のTDKを相手に、栃木は優勢に試合を運んでいた。71分にTDKの千野が2枚目のイエローカードを受けて退場し、栃木の絶対的優位となったはずだった。この時点でサイドバックの攻撃参加を全開にすべきだった。さらに81分・高橋、86分・富永が一発退場。11人対8人。残り10分弱だったが、1点を取って勝ち切る千載一遇のチャンス。さあ、どうやって点を取る? ベンチは右サイドバックの北出をワイドに張るように指示したが、攻めてこない相手に対しては2バックで十分だった。失点のリスクを考える以上に、栃木は1点取らなければ話にならなかったのだから。両サイドにできる広いスペースも活用できず、左からのクロスボールを連発する単調な攻めを繰り返した。8人全員で守る相手に、自ら数的優位性を消してしまった。「茅島の精度の高いクロスボールに頼り過ぎた」と高橋監督も反省していたが、堅い守りに入った相手を引き出したりバラしたりするために、もっと走ったりボールを動かして工夫してほしかった。
サッカーは「いかに数的優位をつくるか」というゲームでもある。11対11の局面局面で数的優位をつくりながらフィニッシュへと近付ける。それが、3人も少なかった11対8でフィニッシュできなかった。2005年のアローズ北陸戦でも11対8の場面があったが勝ち切れなかった。ロングボールを放り込むだけのぎごちない攻撃を思い出す。ところが、2年前よりランクアップした現チームも同じ轍を踏んだ。だから深刻なのだ。自分たちのアイデア&ラッシュで突破口を開けなければ、Jを目指すチームの力量が問われる。まだ優勝への巻き返しの期待が残っていたTDK戦は、勝ち点3が求められたし、その勝ち点3がグリーンスタジアムの芝生の上に転がっていたのに。野球で「ノーアウト満塁は点が入らない」のと同様に、サッカーでも「数的優位は点が入らない」ことが多いと分かっていても、ホームの観客がつらそうな顔で帰っていくのを見るのは忍びなかった。
結果が出ないので話が悲観的になってしまうが、攻撃の形はここ数試合、良くなっている。前線でのコンビネーションが上がってきた。TDK戦も、前半のビッグチャンスで1点でも入っていたら、間違いなく楽勝できたはずだ。5試合勝ちなし、ホーム5戦連続勝ちなしという「なべ底状態」の今、選手たちが感じているプレッシャーは相当なものだろう。でも、ここで必要なのは、選手個々が自信を取り戻し、自分の良さを思い出し、自分と仲間を信じて、思い切ってプレーすることだ。ベンチ入り選手やベンチ外の選手も含めて、チーム一丸となって、「晴れの国・岡山」での三菱水島戦から、巻き返しの上昇気流に乗っていこうではないか。
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by tsc2007 | 2007-06-08 10:54
No.217 TDK戦なぜノーゴールだったか
f0136083_10455834.jpg  TDK戦は勝ち点3が取れるはずの試合だった。TDKが守備的だったこと以上に、栃木はサイドの石川や久保田、ボランチに入った小林らの動きが良く、2戦連続先発の佐野も勢いがあったから、時々攻め込まれることはあっても、久々の楽勝パターンかと思われた。そんな展開も予想して、前回「決定力」について書いたが、結果的に0-0のスコアレスドローに終わり、バツが悪くてしょうがない。「栃木は決定力不足じゃないか。何のんきなこと書いてんだ? オッサン」といった声が聞こえてきそうだ。
  シュート数は22本対3本(公式記録による)。栃木が圧倒していた。山下、小林、久保田は3本ずつ打ったし、佐野や石川も惜しい場面があった。北出、谷池、山崎のDF3人も計5本。それでもノーゴールだったのはなぜか。栃木の「決定力不足」や「練習環境の劣悪さ」を言うのは簡単だが、これとは別に2つの要素があったように思う。一つはTDKのGK小野のうまさ。プレーもうまいが、栃木の猛攻シーンで接触を理由に倒れて長い時間を使った。20分には左手首を山下に蹴られて治療に5分間かけた。勝負の行方が切羽詰まってきた79分には、クロスボールに永井と北出が入ってきた競り合いで倒れ、再び5分間。これも含め、一人で12~13分くらいは時間をロスさせた。本当に痛かったとは思うが、栃木の勢いを断つ意図も少なからずあったと私の目には見えた。
  もう一つは岡宏道主審の不可解な判定の数々。前半から、ちょっとちぐはぐなレフェリングがあったように感じていたが、後半に入って、例えば永井が相手と競り合うとファウルを取られ、ボールを失った。永井はプレーも顔立ちもアグレッシブなので、笛を吹かれやすいタイプなのかもしれないが、それでも吹き過ぎだ。ほかにも疑問を感じる判定があった。TDK側も、栃木のGKチャージにピリピリしていたし、栃木ペナルティエリア内のハンド(?)でPKを取ってもらえなかったことを根に持っていた。ピッチの中で、双方の選手のストレスがたまっていた。ゴールは奪えない。時間ばかりが経っていく。ホームの栃木にとって、プレッシャーはより強く感じられただろう。
79分の接触プレーの際に、GKと競った北出をDF高橋が右足で蹴った。勘違いして北出にイエローを出そうとした岡主審は副審と協議の末に高橋にレッドカードを示した。再開直後の86分には、北出が今度はDF富永と空中戦。着地後に富永は北出を突き飛ばした。ところが岡主審は北出にイエローを出し「2枚目で退場」を宣告した。ピッチの外に出た北出に審判団が「勘違い。まだ1枚目」と判定をくつがえした。芝生をたたいて怒る北出。当然だ。北出の鬼気迫るヘディング攻撃を見ただろうか。「何が何でも勝つんだ」という気持ちが表れていた。そのアグレッシブさを主審が反則行為と見なすのだ。たのむぜ、オッサン! 結局、富永が乱暴行為(高橋退場の相手だった北出への報復行為)で一発退場となった。
この二つの理由によって、良かったはずの栃木のリズムに狂いが生じたと思う。TDKは千野がイエロー2枚で71分に退場していたので、ロスタイムを含めて10分くらいを11対8の圧倒的・数的優位で戦うことになった栃木。それでもノーゴールに終わった、もっと深刻な原因が、この短い時間の中に見えた。
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by tsc2007 | 2007-06-05 10:46
No.216 「決定力」の話
f0136083_1545428.jpg  2点取ったホンダ戦、2回のゴールシーンの写真を私はどちらも失敗した。撮っているのだが、石川(先制のヘディング)、山下(2点目のワンタッチシュート)ともに、相手DFが完全に重なってしまった。いわゆるブラインドというやつ。くやしいなあ。スポーツカメラマンはポジショニングの運に左右されることが多いんです。こうして、いつも失敗ばかりしています。一試合に300枚くらい撮る中で、良さそうなのは20枚ほど。シュート15本で1ゴールの換算だ。私の決定力はたいしたことがない。だから…というわけではないが、私はサッカーシーンでよく耳にする「決定力不足」という言葉がきらいだ。その表現が当たっていればいいけど、無得点だったというだけで使われると困る。例えば、昨年のクラブW杯決勝。0点で負けたバルセロナは決定力不足のチームだろうか。肝心の試合でゴールできなかったロナウジーニョは決定力不足の選手なのだろうか。そんな表現はあり得ない。
  上位との7連戦を1勝3分け3敗と散々だった栃木SC。この間、7得点9失点で、3敗はいずれも無得点だった。それで、報道もチーム自身も「決定力不足」「得点力不足」と表現した。本当にそうだろうか。栃木には山下がいる。横山聡がいるし、吉田賢太郎、西川、金子、佐野もいる。小林や石川、高秀、茅島、永井…。吉見も忘れちゃいけない。彼らの顔を思い浮かべながら、「結果がすべて」と冷たく言い放つことは、私にはできない。選手個々の問題もあるだろうし、チーム戦術の問題もあるだろうけど、何よりも、彼らにはゴール枠にきちんとシュートするためのトレーニング環境が与えられていない。夜の闇でゴールポストも見えないんですゾ(ちょっと大げさ)。
  チームがFW上野優作の加入を発表した。J1・サンフレッチェ広島からの完全移籍。現時点での選手補強の是非は別にして、大きな戦力になることは間違いない。アビスパ福岡では山下とコンビだった。京都パープルサンガではJ1復帰の力になった(吉田賢太郎も所属)。アルビレックス新潟のJ1昇格にも貢献した。昨年までの11シーズンで、J1・J2のリーグ戦306試合に出場し50ゴール。すごいキャリアだ。私はJリーグデビューしたころの上野を取材したことがあり、Jでやっていく自信が日に日に高まっていった姿を良く覚えている。真岡高―筑波大で、ユニバーシアード優勝チームのエースでもあった。ポストプレー、ヘディング、混戦での粘り、前線からの守備。泥臭くて汗臭い、頼りになるストライカーだ。
  「決定力」の話に戻るが、もし上野が出場して何試合か無得点だったとしても、決定力不足というわけではない。そこのところのニュアンスが分かっていただけるとありがたい。まだ4点しか取っていない山下のことを「決定力不足の選手」とは言えないのと同じ意味で。サッカーは点を取るスポーツだが、点を取らせないスポーツでもあるのだ。40年近くサッカーファンをやっていて、日本人で真の点取り屋だと思うのは釜本邦茂(旧ヤンマー)と中山雅史(ジュビロ)だけだが、この二人でも点を取れなかった試合はたくさんある。
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by tsc2007 | 2007-06-01 15:45
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