栃木SCふぁん!No.252 「お前らを忘れない!」
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  今季最終戦終了のホイッスルが鳴った時、サポーターたちが横断幕を広げた。メーンスタンドには「俺達はお前らを忘れない!俺達の誇り 栃木の勇者達」、バックスタンドには「お前達の作った歴史は忘れない ありがとう」。試合後に選手やスタッフ、サポーターたちが流した涙の意味がここに凝縮されていた。「お前ら」とは、もちろん、この日で栃木SCを去る選手たちのことだ。39人のうち残るのは9~10人との報道が試合日直前にあって、その中に栃木SCの歴史を作ってきた選手は一人もいないことが分かり、悲痛な感情が込もる横断幕の文字となった。
  今季プロ契約で契約更新しないのは北出、谷池、山田、西川、山下、吉田賢、石川、茅島、片野、永井、高野、金の12人。どの選手も惜しいが、とりわけ私たちをたくさん喜ばせてくれた賢太郎やベテランの域になった石川と高野、地元出身の西川、茅島、永井は残念だ。アマチュア登録のうち、契約するのは1人(高安)と聞いて内心びっくりした。ほかの選手はいわゆる「戦力外」。今季フル出場のGK原、連続フル出場新記録の鉄人・堀田、ミスター栃木SCの只木、いぶし銀の種倉、堅実な遠藤、玄人好みの横山寛、ハッスル男の佐野、気迫のGK星、スピードスター高秀、意欲ある林、センスの池田、突貫小僧の本田、才能を秘めた菊池、努力家の井野、得点感覚ある金子、技ありキックの毛利、密かに期待していた吉田貴。みーんな去ってしまうのか。歴史を作ってきた選手たちが、新しい歴史の扉をくぐることなく、追われるように裏の扉から出て行く姿は見るに忍びない。
  1年前。シーズンを振り返る当コラム(第192回)に、天皇杯出場を決めた時に写した全選手の写真を掲載した。バックナンバーで開くことができるが、写真のキャプションは欠落している。そこには「この笑顔の面々を私たちファンは忘れない」とあった。J2昇格を目指す新シーズンに、おそらく半分は入れ替わっているだろうと思っていたからだ。ところが現実には、監督も含めてほとんどのメンバーが残留した。これは信じ難かった。私が早くから再三「原因は1年前にあった」と主張しているのはこのことで、昨年やらなかった分、今年の柱谷監督とフロントの大ナタが非情かつ強権的に見えるのだ。プロスポーツの指導者は「私情をはさんではいけない」ことを学んでいる。歴史や地元のしがらみがない柱谷監督にはそれができた。苦汁の決断だったに違いないが、純粋に来季のJ2昇格だけを考えれば大改造は避けられなかった。
  今は、栃木SC丸が今季のように座礁してしまわないように、柱谷船長が万全の準備をしていると見るしかない。一方、退団した選手たちの今後も気になる。彼らが新チームを作ったらJFL中堅レベルの強さだと思う。他チームに移籍する選手もいるだろう。このまま終わってしまっては惜しい選手ばかりだ。どんな動きになるのか、注目したい。
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# by tsc2007 | 2007-12-07 12:57
栃木SCふぁん!No.251 8位終戦
f0136083_12562118.jpg  今季最終節は16位のFC刈谷が相手。シーズン終盤のベストメンバーといえるGK原、4バックは片野、谷池、山崎、石川、ボランチは米田(めた)と久保田、右サイドに高安、左サイドに小林、2トップは上野と横山聡の先発だった。ゲームは序盤からホームの栃木が支配的だった。特に高安の突破、小林と石川の連携によって、両サイドから相手を揺さぶった。刈谷は守備に重点を置いていたようだが、ボールサイドに寄り過ぎるきらいがあり、サイド攻撃を意識した栃木にとってゴールは時間の問題に見えた。パスも良く回り、サトシや上野、小林らが果敢にシュートを狙った。
  31分、小林が左に上がった石川に開き、石川はゴールライン際からゴール正面に精度の高いクロスボールを入れた。サトシがダイレクトでシュート。GKがこぼしたところにサトシが自ら詰めて先制した。44分には右サイドで片野からパスを受けた高安が一発でDFを抜いてエリア内へ。グラウンダーのパスをゴール前に通し、ファーで待ち受けていたサトシが右足で合わせて追加点。2点ともゴール前でなぜかフリーだったサトシは、昨季の吉田賢太郎に並ぶ12ゴールでチーム最多得点。2点目の時に、高安はパスを出す瞬間、ニアのゴール枠を狙ってシュートするような顔の動きを見せた。これに相手DFがつられ、パスコースが空いたように見えた。キックフェイントでも、ノールックパスでもない、ルックフェイントのような微妙なパフォーマンス。後で高安と話す機会があったら確かめてみたいが、高安はスピードだけではない、すごいテクニックを持った選手かもしれない。
  後半も栃木の攻勢が続き、追加点がほしかった。J2昇格の夢が断たれたにもかかわらず、スタジアムは6387人もの観客・サポーターで盛り上がっており、3点目を入れて快勝すれば、みんなの胸にわだかまっていた何かが吹っ切れる…そんな雰囲気だった。ところが76分、刈谷の右サイドから岡戸が強引に入れたクロスボールに栃木DF陣が反応できず、篠川にスライディングで押し込まれてしまった。試合後、柱谷監督もなげいていたが、この失点はいただけない。アーリー気味のボールがいつ来てもいいようにアラート(集中して準備)していれば、誰かがクリアできたボールだ。栃木は結局29失点で「リーグナンバー1の堅守」ということになったが、それでも8位で終わったのは、このような失点によっていくつもの勝ち点を失ってしまったからだ。
  試合は2-1で栃木の勝利。良かった。サポーターたちも、この勝利を温かく祝福してくれた。2ゴールのサトシは、試合後のヒーローインタビューで涙を流しながら「メンバー全員、サポーター全員で取ったゴールです」と言った。ほとんどの選手の目に熱いものがあった。サポーターの中にもスタッフの中にも泣いている姿があった。そのへんのところは次回に。ミスター栃木SC・只木のことや今年一年のこと、観客動員新記録、チーム編成、そして「決定力不足なんかじゃなかったんだよ」といったこと……。いろいろ書き足りないことがある。シーズンは終わってしまったが、もし読んでいただけるなら、当コラムの今シーズンはもう少し続けようかと思う。
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# by tsc2007 | 2007-12-04 12:57
栃木SCふぁん!No.250 後半3ゴールに意義あり
f0136083_14271035.jpg  後期第16節の流通経済大戦は、栃木が押し気味に進めていたのに、35分にCKから失点して相手ペースになってしまった。ハーフタイムを経て主導権を引き戻した後半に3ゴールを挙げて逆転勝ち。失点はミスからだったが、その落胆を流れの中で持ち直して歓喜に変えた。柱谷監督の来季続投が決まって迎えた最初のゲームだから、より一層意義のある勝利だった。
  高安が前節に右足首を痛めて、深澤が左サイドハーフで入った。7試合ぶり先発の深澤は気負い過ぎたか、慎重過ぎたか、本来のスピードとパワーを見せられなかった。序盤は上野や横山聡が精力的で、小林や久保田もチャンスに絡み、波状攻撃が何度も見られた。35分に反撃を受け、流経大の右CKに。栃木はゾーンディフェンスが基本だが、相手セットプレーの時はマンマーク。ところがゴール正面へのCKに走りこんだDF飯田に片野が振り切られた。飯田はフリーでドンピシャのヘディングシュートを決めた。柱谷監督はハーフタイムに片野に「負けたらオマエの責任だゾ」とまで言ったそうだ。当然、「片野のためにも、周りも頑張れ」という意味だ。後半、柱谷監督は、相手ドリブラーの加来とのマッチアップに悩まされた右サイドバックの片野を守備能力の高い左の石川とチェンジすることも考えたが「それで勝っても片野のためにはならない。最後まで責任を持たせるつもりだった」と使い続けた。プロの指導者は若手を育てる途上でこのような考え方をする。片野は「最悪の形で失点したことは忘れない」と90分間を全力プレーで乗り切った。片野にとって、今後のサッカー人生に必ずプラスとなる一戦になったはずだ。
  柱谷監督は「失点してからガクっと落ちた」と見えたチームに対してもゲキを飛ばした。多少のプレッシャーをこわがらないようにカツを入れ、意欲を持ってプレーし続けることを指示した。トレーニングを思い出し、開き直った選手たちは、パスをつなぐ意識を取り戻した。49分、左サイドで深澤からボールを受けた久保田が相手をかわして好クロス。上野が頭で落とし、山崎が右足で合わせて同点にした。60分には米田(めた)がつないだボールを小林が縦パスし、横山聡が高度なダイレクトの反転シュートで追加点。2分後に山崎のクリアミスから同点弾を浴びたが、84分には片野のパスからサトシがドリブル。エリア内にいた山下に渡り、これもワンタッチの左足で再び勝ち越した。相手が若い学生だったことを差し引いても、3つのゴールの取り方は上々だった。
  決勝ゴールの山下は「僕のところにボールがこぼれてきてラッキーだった」といつものように冷静だったが、チャンスの場所にいたことがFWの資質だ。アウェーに400人以上も駆け付けて、まるでホームのような雰囲気をつくり上げていたサポーターたちは試合後、アルテ高崎戦の時のように山下コールを繰り返し、山下も両手を挙げてそれに応えた。サトシと山崎の応援歌も、そして最後には柱谷コールも沸き起こり、J2昇格を断たれたチームとは思えないような盛り上がりだった。ただ、選手たちにとって今週は針のムシロにいる感じだろう。プロ選手には11月30日までに来季契約に関して通告が出る。プロの世界。厳しいことは当たり前とはいえ、この一年間、目の前で戦ってきた選手が去っていくことは胸が痛い。
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# by tsc2007 | 2007-11-27 14:27
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