強い日差しでまぶしい真夏日だった後期第9節のホンダFC戦。今季3番目に多い5588人もの観客の前で、J2昇格のために負けてはいけない栃木SCが、前半にまさかの3失点を食らって0-3で完敗した。前年覇者のホンダは底力のあるチームだから、アウェーならこの結果は仕方がない。でもホームだったのだ。ここ2年ほど互角に競い合っていたチーム力はどこに行ってしまったのだろうと思わせるような、不甲斐ない試合内容に唖然とさせられた。
4・4・2同士、がっぷり四つの好ゲームが期待された。しかし前半、栃木が良かったのは16分に上野の左からのシュートが抜けたところに只木が詰めたシーンだけ(オフサイドでノーゴール)。栃木はワンサイドゲームと言っていいくらいにやられ続けた。21分、ホンダ右サイドで堀切が柴田につなぎ、クロスボールを正面から新田がヘディングで決めて先制。守備要員は足りていたのに簡単に失った。36分には左に流れた柴田がグラウンダーでセンタリングし、新田がスルーした後ろで西がスライディングしながら押し込みホンダが追加点。さらに39分、右の堀切から柴田を経て中央で受けた糸数が左足ロングシュートを右隅に放り込んだ。
3点を追う後半、栃木は高野を下げて久保田を入れ、3バック気味にした。右サイドの小林に代えて高安も同時に投入。「先に1点を取れば流れが変わる」(柱谷監督)と、サイドから前へのスピード勝負に出た。ところが前半同様、ホンダは栃木のサイドハーフを数的優位で徹底マークし起点をつぶした。栃木はさらに堀田に代えて山下も入れ、超攻撃的シフトを敷いたが、決定的シーンは85分に只木、久保田、小原がワンタッチをからめてパスを回し、最後は山下がシュートした1本にとどまった。ロスタイムには、裏に抜けたFW川島を山崎が後ろから倒してレッドカード。もう散々だった。
試合後、柱谷監督はアラート(常に油断せず機敏に対応すること)という表現を使い、山崎の退場を「今日のゲームを象徴するシーン」と指摘した。アラートは野球やバレーボールなど他のチームスポーツにも必要なものだが、脚への負担がある。サッカーは走る距離が長くて体力消耗が激しい分、アラート意識が薄れやすいが、栃木には前半からこれが足りなかった。例えば、ホンダの右サイドバック堀切はまさに90分間、アラートな状態だった。ボールが遠くにあるのに、彼の両足が小刻みに反応していたのを私は何度も見た。
それにも増して私の目には、山崎だけでなく栃木のほとんどの選手に疲労がたまっているように見えた。みんな体が重そうだった。昼練習に移行して2か月。猛暑日が続いた夏の疲れはピークではないだろうか。選手に聞いても、誰も弱音は吐かないけれど、フィジカルコンディションが心配だ。負けられないプレッシャーはさらに強いだろう。メンタルコンディションは大丈夫だろうか。シャワーだけでなく、ちゃんとあったかい風呂に入っているだろうか。
4位以内が至上命題の9位・栃木にとって勝ち点0は致命傷。流経大に抜かれて10位に下がったが、次の試合(9月23日の天皇杯2回戦)まで2週間、次のリーグ戦(9月28日の佐川急便戦)まで18日間。コンディションを回復するだけの時間はある。